昨今、クリーンエネルギーの代表格、太陽光発電システムが注目を集めています。住宅街の屋根や空き地に太陽光発電パネルが並んでいるなど、そんな光景を、日常的に目にするようになりました。実は、太陽光発電システムには、家庭用と産業用があります。両者の違いはどこにあるのか、ポイントを踏まえたうえで解説します。
家庭用と産業用の違い
はじめに、太陽光発電システムの、家庭用と産業用の基本的な相違点を確認しておきましょう。まず大きな違いは、出力です。もっとも重要な出力は、家庭用が10kW未満であるのに対し、産業用は10kW以上となっています。また、家庭用と産業用は、電気の使い方にも違いがあります。家庭用の太陽光発電は、住宅内で消費しきれない分を、電力会社に買い取ってもらえます。これを専門用語では、余剰買取といいます。
一方で、産業用の太陽光発電は、発電した電気をすべて電力会社が買い取ります。つまり、産業用の太陽光発電は、全量買取が前提です。ただし、家庭用であっても、太陽光発電システムの設置容量が10kWを超えると、全量買取制度が適応されることになるため、注意しておきましょう。逆に、産業用でも10kW未満であれば、余剰買取の対象になります。発電量によって、適用される買取制度が異なる点を、覚えておいてください。
固定価格買取制度(FIT)の買取期間、買取単価にもはっきりとした違いが表れています。買取期間は、家庭用で10年間、産業用は20年間です。買取単価は、2022年度を例にとれば、家庭用でkWhあたり17円、産業用は、10kW以上50kW未満の場合、同じくkWhあたりで11円となっています。
固定価格買取制度とは、太陽光発電をはじめ、風力発電や地熱発電などの再生可能エネルギーで発電した電力を、一定期間、固定金額で買い取ることを、義務付けられている制度です。FITとも呼ばれており、再生可能エネルギーを普及させることを目的としています。FIT制度が日本で導入されたのは、2012年7月です。ドイツでは1991円、スペインでは1992年に導入されており、日本が遅れて導入していることがわかります。
また、日本はエネルギーの自給率が低く、他国から輸入をしています。そのため、エネルギーの輸入依存が不安視されているのです。国際情勢の影響で、今までのような安定した電力の供給が難しくなる恐れもあります。しかし、FIT制度が導入されたことにより、再生可能エネルギーによる発電率は上がっています。今後も、再生可能エネルギーによる、発電率の上昇が期待できます。再生可能エネルギーによる発電率が上がれば、自然とエネルギー自給率も上がります。
家庭用太陽光発電システムの特徴
ウクライナ侵攻などの海外情勢の影響もあり、年々、物価が高騰しています。普段の暮らしでも、実感していることでしょう。とくに、電気料金の値上げは、生活に直結するため、に頭の痛いところです。こまめな節電対策も有効ですが、自分の家で発電できる、家庭用の太陽光発電システムを利用するのも1つの手です。
太陽光発電パネルは、自家用として消費できるのはもちろん、使いきれなかった余剰分の電気は、電力会社に売電することも可能です。そのため、あまり電気を使わない家庭では、お得になる場合もあります。
また、特筆すべきなのは、日々の電気料金が、自家発電している分だけ抑えられるということです。自家発電できることにより、今まで電力会社から買っていた電気の量が少なくなります。よって、月々の電気会社へ払う金額が安くなるでしょう。また、余った電気は電力会社へ売電するため、プラスになる場合もあります。太陽光発電は、物価高騰のあおりを受けて、苦しくなる家計の手助けをしてくれます。
外観の面からいえば、太陽光場パネルを設置する場所も、ポイントがあります。家庭用の大半は、自宅の屋根にベースとして、架台をセットしたうえで、太陽光パネルを固定、設置するタイプです。屋根以外では、カーポート上や住宅の外壁に、垂直設置する方法などもあります。また、地震や台風、水害などの災害が起こったとき、たとえ長期的に停電しても、自家用発電として活躍するのも大きなメリットです。
さらに、固定価格買取制度(FIT)上の適用期間が、10年間ということも、あわせて頭に入れておいてください。ただし、太陽光発電パネルを設置したからといって、すべての電気をまかなえるわけではありません。なぜなら、太陽光発電は太陽光をあてて発電するからです。つまり、太陽が出ていない夜間や雨の日は、発電ができません。
しかし、蓄電池も一緒に導入すると、発電した電気を貯めておけるので、災害時にも役立ちます。蓄電池と太陽光を一緒に導入する家庭も多いです。太陽光と蓄電池をセットで導入することは、災害時や太陽が出ていない夜でも、発電した電気が使えるというメリットがあります。
一方で、導入する際の工事費用が高額というデメリットもあります。太陽光発電だけ設置する場合は、120万円が相場です。蓄電池も一緒に導入する場合の相場は、150万円~200万円ほどかかるため、初期費用の負担が大きいです。
産業用太陽光発電システムの特徴
産業用の太陽光発電システムでデメリットとなるのは、太陽光パネルを設置するために、ある程度、広いスペースが必要ということです。太陽光発電パネルの設置スペースは、家庭用とは明らかに違います。屋根に設置することも可能ですが、規模により不可能なケースもあります。産業用太陽光発電パネルの設置場所は、工場跡地などのフラットな空き地や山の一部を造成したところなどが代表例です。ちなみに、この形式は、野立て太陽光発電といわれています。
また、設置する環境に合わせて、太陽光パネルの形や大きさ、架台などの仕様が変わることにも注意が必要です。場所に応じて設計する特注品が必要な場合もあり、結果として、割高になることもあります。固定価格買取制度上(FIT)、産業用は、出力の違いによって買取方法が分かれているのが特徴です。出力50kW以上だと、全量買取の選択は可能ですが、出力10kW以上50kW未満の場合は、原則的に全量買取ができません。
さらに、出力10kW以上の固定買取価格は、3通りに分類されています。2022年度の例では、以下の通りです。出力10kW以上50kW未満は、1kWhあたり10円、出力50kW以上250kW未満では、1kWhあたり9円、出力250kW以上にいたっては入札制度で決定する仕組みになっています。
また、出力が10kWh以上の場合、FIT制度の固定買取期間は20年です。家庭用太陽光発電の固定買取期間は10年なので、それよりも10年長く、固定価格で売電できるのも、大きなメリットです。産業用の太陽光発電パネルは、家庭用とは異なり、規模も大がかりではありますが、売電収入をより多く、長く得られるのが産業用のメリットといってもいいでしょう。
まとめ
太陽光発電システムの導入は、もはや時代の流れといってもいいかもしれません。電気料金の値上げが止まらない状況下では、あれこれ工夫しても、節電対策には限界があります。そこで期待できるのが、太陽光発電システムです。今回の記事では、家庭用と産業用とではどう違うかについて紹介しました。両者を明確に分けるのは、出力が10kWを超えるかどうです。また、固定価格買取制度(FIT)上の適用期間が、前者は10年間、後者は20年間、ということも覚えておきましょう。基本事項を理解したうえで、太陽光発電システムの導入に向けて、さらなる検討を重ねてみてください。