投資用太陽光発電を考えたときに、大切なのはもちろん、どれくらいの発電量が見込めるのかという点です。
そのためには発電量の算出方法を知る必要がありますが、なかなか難しいため業者任せになってしまう人も少なくありません。
でも、投資として太陽光発電を行うのであれば、やはり自分でしっかり算出方法を勉強することが大切です。
太陽光発電の年間発電量の目安を知っておこう
太陽光発電を投資と考える場合、経済メリットを左右する発電量はとても大切な数字です。もちろん作り出した電力すべてを売るというご家庭は少ないでしょうから、投資内容としては太陽光で発電し、まずは自宅で使用する分は使用して電気代を削減した上で、余った電電力を電力会社に売ることになるでしょう。
つまり売電収入のみではなく、電気代削減分も含めて、2つの経済メリットで計算するのがおすすめの方法です。そしてこれらの経済メリットを支えるのが発電量です。
一般的に太陽光発電の年間発電量は、現在1kWあたり1000~1200kWhが目安だと言われています。事実、経済産業省のデータによると、10kW未満の場合、平均的な年間発電量は1191kWhとなっています。( 平成31年1月9日調達価格等算定委員会「2017年10月から2018年9月の間に収集したシングル発電案件の平均値な設備利用率13.6%」より)
ただこの数字だけでは、具体的に年間どれぐらいの発電量になるのか理解するのは難しいのではないでしょうか。特に単位であるkW(キロワット)やkWh(キロワットアワー)の違いなども、ちゃんと把握する必要があります。
ちょっとややこしいので、それぞれをざっくりまとめておきましょう。
・kW(キロワット)瞬間的に発電する電気の大きさ。瞬間的な出力(発電能力)を表す。
・kWh(キロワットアワー)実際の発電量を表す。
太陽光発電の容量はkWで表され、数値が大きければ大きいほどたくさん出力する能力を持つことになります。また設置容量は太陽光パネルの容量の合計とパワコンの容量の合計との2種類があり、多くの場合、設置する太陽光パネルの容量の合計のほうが表示されています。違う種類で比較すると大きな間違いとなるため、注意が必要です。
これに対してkWhは発電量そのものの単位ですが、1kWhは1kWの発電を1時間続けることで得られる発電量を指します。
出力×時間=発電量
という計算を覚えておきましょう。
これらの数値を元に、設置した場合にどれくらいの収支が見込めるかを計算することになります。
気になる発電量の算出方法を紹介
おそらく太陽光発電で収支を計算する場合、業者からシミュレーショングラフを提示されるでしょう。一般的には設置年ごとにどれくらいの収入が見込めて、費用をどのように回収できるかといったグラフになります。
kWと設置価格、回収年数などが数値化され、何年目以降利益が得られるかがわかるようになっています。同時に年間の電気代削減費用も提示され、売電収入と差し引いてどれくらいのメリットが生まれるかも提示されるのが一般的です。
ここで気になるのが、発電量の算出方法です。年間発電量の算出方法の計算式は、
日射量(kWh/㎡)×0.85(システム出力係数)
となっており、重要なのがソーラーパネルに差し込む太陽の日射量です。
当然ながらパネルに太陽が当たらなければ発電はできませんので、年間発電量を算出するには設置地域の年間日射量の情報が必須となります。日射量はもちろん推定値になりますが、地域別に年間日射量のデータベースが公開されていますので、そちらを参照することが可能です。
国立研究開発法人のNEDOでは詳細なデータベースを無償で公開し、エリアや地点を選択して角度指定をすると、設置する屋根の向きや角度に合わせて平均値が出るようになっています。こちらを参照し、365倍すれば年間のおおよその日射量は把握できるでしょう。
またシステム出力係数(損失係数)というのが気になりますが、こちらはソーラーパネルの性能によって、どうしても出てしまう損失分を考慮した数値です。各メーカーのソーラーパネルのカタログには定格出力が記載されていますが、それはあくまでもメーカー側の参考値です。
実際に設置した場合はさまざまな外的要因で計算通りの出力はできませんので、一定の損失量を見込むため一般的に0.85掛けで計算するようになっています。もちろん出力係数は年々向上傾向にありますので、実際には多くの機器で90~95%程度の損失で済むようになりつつあります。ただ、屋根の上など屋外に設置する以上、汚れや温度などによって出力の損失が出るのは避けられませんので、こうした係数が掛けられるのが一般的です。
そして、投資目的であれば送電による損失分にも注意が必要でしょう。ご家庭で発電するだけであればそれほど気にしなくてもいいですが、中規模以上の売電であれば送電線の距離などもきちんと計算しなければなりません。例えば日当たりが良いため山の斜面などにソーラーパネルを設置したくても、遠隔地では送電線が長くなり、それに比例して電力ロスが大きくなる懸念があります。
太陽光を浴びなければならないのに、熱が高くなりすぎると熱損失も大きくなるため、高温になりすぎないよう設置場所にも配慮が必要です。耐性の高いパネルなどもありますが、設置環境によってパフォーマンスに差が出ることは理解しておきましょう。
電気代削減額とあわせて売電収入を計算しよう
発電量の計算式は前述の通りですが、これを元に売電収入の目安をシミュレーションすることができます。
住宅で余剰売電を売電する場合は、自宅で消費することで浮いた電気代もきちんと把握して計算することが重要です。基本的な収入相当額の計算式は以下の通りです。
発電量×売電単価×0.7 + 発電量×買電単価×0.3
この計算式で気になるのは0.7と0.3という数値ですが、これは発電した70%を売電し、30%を自宅で使うというシミュレーションにしているからです。また、一般家庭の電気代月額は8.000円、太陽光発電の出力は4kWと設定しています。
このあたりの数値は、自分の条件に合うものを入れて計算してみてください。例えば太陽光発電のパネルが4kWより多く出力できるものであれば、家庭で使う電力は30%もかからない可能性もあります。
大切なのは販売できる分と消費分とのバランスですので、投資する場合は実際に発電量と売電収入、利回りについても求めてみましょう。例えば東京の南向き戸建住宅に130万円でソーラーパネルを設置した場合のシミュレーションをしてみましょう。
売電条件31円/kWh、電気代単価28円だった場合、上記の計算にあてはめてみるとどのような利回りになるでしょうか。東京の年間日射量は1361kWh/kWですので、この場合では年間発電量の予測は4629kWhとなります。
これにより年間売電収入は10万449円となり、自宅で使う年間の電気代は3万8.883円となります。つまり年間で13万9.332円の収入となり、利回りは10.7%です。
このご時世に年利10%を超える投資と考えればかなり良い条件ですし、ソーラーパネルを設置して快適に暮らすだけなのですから嬉しい話でしょう。ソーラーパネルは20年で10%程度の経年劣化があり、 パワーコンディショナーの交換は30年に1度程度と言われますが、それを考慮しても採算性は十分です。
太陽光発電の電力量の算出方法について紹介しました。太陽光発電はシステムの性能が上がり、価格が下がって来ているため投資にも十分見合う時代になりました。条件が良ければ高い利回りも期待できますので、お住いの地域の条件で実際にシミュレーションをしてみるのがおすすめです。
経年劣化や部品交換は必要ですが、それを見込んでも十分に採算が合うケースも増えています。この記事で電力量の算出方式をしっかり把握し、是非納得の行く投資を実現してください。