温暖化対策として、そして投資の対象として太陽光発電が注目されました。太陽光発電設備は可動部分がないため、設置したらそのまま静かに置いてあるだけに見えます。しかし高圧の電気を扱う機器である以上、場合によっては危険がともなうことがあります。今回は、太陽光発電設備を設置するときに知っておきたい危険性とリスクをまとめました。
災害などで浸水・破損した太陽光発電設備は危険!
近年は、いろいろなところで太陽光発電設備を見かけるようになりました。当然ですが、太陽光発電設備は太陽の光を受けて電気を起こすための設備です。この頃増えている大規模の設備になると、太陽の光を受けて発電しているときは設備の中を高圧の電気が流れています。
もちろん、通常は電気が外に漏れないようにしっかりと安全対策が施されているので、滅多なことがなければ感電や漏電といった心配はありません。気にしなければならないのは、事故が発生したときです。最近では異常気象が多発し、台風や豪雨による災害も増えてきました。日本各地で洪水による浸水の影響が深刻になっています。それと同時に、洪水が発生して太陽光発電設備が浸水したり破損したりする事例も見られるようになりました。こうなったとき、太陽光発電設備は危険な設備になります。
どういうことかというと、太陽が照っている昼間は、太陽光発電設備の中を高圧の電流が流れているため、それが故障したり浸水したりしていると、むやみに近付くことで感電する危険性をはらむようになります。正常なときは感電することのないようにきちんと絶縁してあって危険性がなくとも、災害の後に設備が損傷を受けている状態では、送電するケーブルが切れているなどして、電気が流れる部分が外にむき出しになっていることがあるのです。
太陽電池は、原理上、光を受けると電気が流れてしまいるため、このような損傷を受けた状態にある太陽電池に近付く事は、大変な危険をともなうのです。災害による損傷を受けている可能性がある場合は、専門の業者を呼んで、きちんと安全を確保した上で措置を行う形になります。行政からも注意喚起が出ているように、災害の後の被害を受けている太陽光発電設備には安易に近付いてはいけません。
もし太陽光発電設備が火災になったら?
太陽光発電設備が火災に見舞われることがあります。高電圧の電気を扱う設備だけに、経年劣化や整備不良などといった何らかの原因で断線が起これば、そこから異常発熱が発生して出火することもありえます。太陽光発電設備から煙が出ていて119番通報は入ったという例も少なくないようです。現に、そうした火災事故が複数件起こっており、消費者庁の消費者安全調査委員会などが原因の調査を行っています。
また、災害の被害を受けて太陽光発電設備が火災に見舞われることもあるかもしれません。この場合も注意が必要です。火災というと水をかけて消火するイメージがありますが、先ほどのように災害の被害を受けて破損が生じて漏電している太陽光発電設備にむやみに水をかけることも危険が伴います。
なぜなら、ホースなどで連続的に水をかけて電気の通り道を作ってしまうことで、行き場を失った電気が水を通じて流れてくるおそれがあるためです。それによって感電してしまうおそれもなくはないといわれています。太陽光発電設備が火災に見舞われた場合も、やはり専門の知識を持った人の手で消火する必要があります。
動く部分がなく、静かに置いてあるだけに見える太陽光発電設備も、目に見えない電気を扱っている設備だけに、専門的な知識を持たないまま扱うのは、とても危険なのです。安全に配慮してしっかりとした定期的な整備が実施されている太陽光発電設備は危険なことはありませんが、何かしら問題があっても適切な対処がされていなかったり、大きな災害の後の点検ができていなかったりする状況では、近付く事で危険をともなうことがあるので注意しましょう。
土砂災害のリスクがあるところには設置しないで!
太陽光発電設備の設置が進んだ昨今、森を切り開いて斜面に設置する例も散見されるようになりました。太陽光発電によって発電された電気に補助金が付いて、電気が高く売れるようになったためです。環境問題の解決のために太陽光発電設備を急速に普及させたいという狙いから始まった補助金の制度ですが、一方で安い山の土地を買って、安易に森を切り開いて太陽光発電設備を設置するような事例が次々に登場しました。
当然、斜面の木を切れば土砂崩れの危険性も出てくるため、これによる土砂災害も深刻になっています。専門家のデータを基に、全国の中規模以上の太陽光発電施設の立地を分析した例では、土砂災害が起きて住宅や公共施設などに被害を与えるような災害リスクのある「土砂災害危険箇所」と一部でも重なっていた施設は全国で1100か所余りにのぼることがわかったとのことです。内訳を見ていくと、「土石流危険渓流」に700か所余り、「急傾斜地崩壊危険箇所」に460か所余り、「地すべり危険箇所」に70か所余りとなっています。
また、避難などの対策が必要な「土砂災害警戒区域」と一部でも重なっていた施設も840か所余りあり、このうち約250か所はとくに危険性の高い「土砂災害特別警戒区域」と重なっていました。地元の住民の方々も、そういった現状を不安視する声もあります。国の審議会でも、こうした現状を踏まえて議論が始まっています。有識者を交えた太陽光発電設備の設置に関する制度設計の見直しなどが検討され、議論が進んでいます。
しかし、現状、すぐの話となると、国の法律では一部の例外を除いて災害リスクのある場所での設置を規制する法律はないため、実質的な規制は自治体に委ねられているのが現状です。そして、安全対策も事業者がどこまで徹底してやるかに掛かっています。このような災害の危険性を評価する仕組みを作り、リスクのある場所での設置を抑制する必要があるという専門家の声もあり、対応が求められています。
少なくとも、これから設置する太陽光発電設備は、そうした危険性をきちんと考慮した上で設置されることが望ましいでしょう。もちろん太陽光発電設備が悪いわけではありません。長期的な目で見たとき、日本の電力供給を支える重要な発電手段の一つとしても注目された上での普及ですので、そういった危険な面だけを見て、設置を否定するべきではないでしょう。
しかし、これまでは普及ばかりが前面に出すぎて、周囲への安全面への配慮の徹底が甘かったところも事実だということです。前にも書いたように、有識者を交えた国での議論も進んでいることから、今後、必要な法的なルールが整備されることと思われます。今後は、「温暖化対策」とか「投資の対象」といった目だけでなく、そうしたルール作りにも注目していく必要があるでしょう。
今回は太陽光発電設備の危険性やリスクについてまとめました。「温暖化対策」とか「投資の対象」といったことで注目を集めている太陽光発電設備ですが、設置の方法次第では危険な設備になってしまいます。太陽光発電設備そのものの設計や定期的な整備で安全面をきちんと考慮することはもちろんですが、設置することによる周りへの影響にも気を配る必要があることは意識しておかなければならないでしょう。